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2004年 はじめてのスウェーデン(その4)





バスを降りて。道路を挟んで右側には民家や古い風車がいくつか見えますが





左側は 見渡す限りの何も無い土地。背の低い樹木がずっと先まで続いています。「アルバーレット」と言うユネスコ世界遺産にも登録されている草原です(この時はそんな事も知りませんでしたが・・・)

バスの運転手さんに教えて貰った通り、右側の小道を下って数分歩いてとうとう念願のカペラゴーデンに辿り着く事が出来ました。




                            正面にある小さなサインボード


サインボードはありましたが、あまりにも周りの景色にとけ込んでいて最初通り過ぎてしまいました。





おおよそ学校とは想像もつかない 古い農家のような佇まい。

「ここがカペラゴーデンかぁ・・・。」 想像は裏切られましたが、むしろ「良い方向に裏切られた」と思いました。とても静かな環境で周りの景色や木々に寄り添っているカペラゴーデン。こんな所で家具作りや工芸を学ぶ事が出来たらなんて素敵なんだろうと。

しかし、感慨に浸っている場合ではありません・・・。 見えない何かに背中を押され「カペラゴーデンで学ぶ」と直感で決意してここまで来た目的を果たさなければならないのです。

その日は校長先生が出勤していたので まず、校長先生に会い前の日に辞書で調べた英語のメモを見ながら入学の意思を伝えました。メモ書きが必要な程英語力が無かったので、校長先生が何を話しているのか良く分かりません・・・。分かったのは「今から家具製作科の先生を呼ぶからお話をしてみなさい」と言う事くらいでした。

しばらく待っていると とても大柄で屈強な男の人が現れました。(これが、この先「僕にとってのスウェーデンの父親」と思うようになるキャレ先生と初めて会った瞬間でした)

怖そうなその先生は会うなり「カム!カム!(来い!来い!)」とどんどん歩いていきます。言われるままについて行くと食堂のような所へ行き「スウェーデン料理は食べたか?」と。「まだちゃんとしたスウェーデン料理は食べていないかも」と伝えると「おなかが空いているからまず食事をしよう!」と僕の分まで用意してくれました。

何から何まで想像を超える展開に驚きながらも食事を済ませ 改めて入学の意思を伝えました。

上手く英語で伝える事が出来ないのを察したのでしょう、途中から当時日本人で1人だけ在籍していた陶芸科の生徒さんを呼んでくれて通訳をして貰いながら分かったのですが「毎年春に願書の締め切りがあって選考試験に合格しなければカペラゴーデンに入学出来ない。」と言う事でした。

入学にあたり何かしらの選考があるのは当たり前の話。しかし、当時の僕はそれを聞いて「春まで半年以上先にならないと先に進めないのか・・・」と少しショックを受けたのを覚えています。「入学するにあたっての要項」を聞くためだけにスウェーデンまで足を運んだだけだった・・・・と。
一気に現実に引き戻された瞬間でしたが、それでもどこか気が晴れたような気持ちにもなりました。

募集要項を知るだけなら日本にいても知る事は出来たかもしれません。しかし、何も分からないながらも実際に足を運んで良かったな と、今でも思っています。

話が一通り終わった後、先生はカペラゴーデンの隅から隅までとても丁寧に案内をしてくれました。先生も英語が苦手なようでしたが身振り手振りでとても良く伝わりました。

帰り際、先生が庭に成っていた洋梨を一つひょいと投げて渡してくれたのを良く覚えています。

初めてのカペラゴーデンは ほんの数時間の滞在でした。帰りのバスを待つ間、目の前にどこまでも広がる草原を眺めた時、スウェーデンに来て以来初めてきちんと景色を見たような気がしました。 とても奇麗な景色でした。

「とにかく半年後、今度はもっとしっかりとした気持ちと一緒にまた来よう!」と思っていました。